花屋のドアから顔を出す長井ジュンさんと木村貴史さんの写真

花の価値と向き合う2人が想像する「フラワーカルチャーの未来」

plantica代表 木村貴史×STARMINE PLANNING代表 長井ジュン

テクノロジーの革新。モノよりコト。

人々のライフスタイルや価値観が変わる中で、 今、原始時代から人が愛し続けてきた 「花」はどのような役割を持とうとしているのだろうか。

人々のライフスタイルや価値観が変わる中で、

今、原始時代から人が愛し続けてきた「花」はどのような

役割を持とうとしているのだろうか。

planticaを率いるフラワーアーティスト・木村貴史

STARMINE PLANNINGを率いる花贈り男子・長井ジュン

異なる角度から花の可能性と向き合う2人の起業家が対談した。

Photo : Kaoru Yamada

Design : Yuya Saka

Edit : Takeshi Koh

plantica

華道家・木村貴史が率いるフラワーアート・ユニット「プランティカ」。花に関係するアート、ファッション、ライフスタイル、カルチャーなど、それぞれの領域を繋げながらスペースデザインから、インスタレーションアート、テキスタイルデザイン、プロダクトデザイン、アートディレクションまでを手がける。これまでにLVMH Group、NIKE、STARBUCKS、TOYOTAなどをクライアントに、イベント、CM、広告など多方面で装花ディレクションを行っている。plantica.net

木村貴史さんのプロフィール写真

STARMINE PLANNING

“花贈り男子”として知られる長井ジュンによって設立されたプロデュースチーム「スターマイン プラン二ング」。商業施設やホテルなどでのイベント企画制作・空間演出をメインに、植物を活かした“ハレの日”の総合演出を行う。クライアントにはSONY、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス、ワーナーブラザースジャパン、寺田倉庫、星野リゾートなど多数。starmineplanning.com

長井ジュンさんのプロフィール写真
ソファーに腰掛けて対談する長井ジュンさんと木村貴史さんの写真

「おっ」と「ぽっ」
同じ花で異なる感動を
届けるふたり

木村貴史さん
木村

長井くんと一緒に仕事したこともあるけど、僕らは花に対するアプローチが全然違うよね。

長井ジュンさん
長井

木村さんは華道家でもあるから芸術という角度で最先端のフラワーアートを追求していて、花を束ねることもできない僕はあくまで企画屋ですが、花を通して人が感動するシーンづくりを追求している…そんな気がします。

リゾートホテルからラグジュアリーファッションブランド、シャンパンメーカーまで多様な企業がplanticaのアートワークに魅了されている
木村貴史さん
木村

そうだね。もちろん僕にも人を感動せたいという気持ちはあるんだけど、僕の場合は「おっ」と思わせたくて、長井くんの場合は「ぽっ」とさせたいって感じじゃない?

長井ジュンさん
長井

とても分かりやすいです。だから木村さんがどんどんエッジの効いたプロダクトで世界を驚かしている一方で、僕は個人のプロポーズの演出や結婚式のサプライズなどを何十回もプロデュースすることに時間を使っています(笑)。

毎年3月8日、国際女性デーに開催される「MIMOSA FESTA」。全ての女性に感謝を伝え、男性からミモザを贈るイベントであり、2016年からSTARMINE PLANNINGが企画・制作を担当している
話を聞く長井ジュンさんのアップ写真

「猿は花を持って人になった」
歴史から紐解く花の価値

長井ジュンさん
長井

フラワーカルチャーの未来を話し合う上で、まずこれまでの花の歴史、価値を振り返らなければと思います。

木村貴史さん
木村

遡りだすと切りがなくなるけど、「猿は花を持って人になった」って話があるよね。

長井ジュンさん
長井

なるほど、面白いですね

木村貴史さん
木村

死者を弔うときに花を置いた。それが人の最初の花の使い方だっていう説なんだけど。近い仲間が死んですごく悲しくなって、その相手に対してどうコミュニケーションをとるかと考えたときに花を使ったのは、そこに物質以上の価値を見出したから。美しさを添えたいと考えたのかもしれないし、神を呼びたいと思ったのかもしれないけれど、この認知革命が猿を人にしたと考えると、花の価値を追求することは人間そのものと向き合うことになるわけ。

ソファに腰掛けて談笑する長井ジュンさんと木村貴史さんの写真
長井ジュンさん
長井

だから歴代の画家たちも花というモチーフを描いてきたのかもしれませんね。

木村貴史さん
木村

ゴッホのひまわりモネの睡蓮ウォーホルのハイビスカス、みんな花の絵で有名になってるし、時代を超えて残ってる作品も多くが花の作品だからね。 なんでかっていうと、人種も世代も問わず、人は花に共感できるからだと思ってる。

長井ジュンさん
長井

ジローラモさんに教えてもらったんですけど、イタリアには「口で言えないことは花で言え」ということわざがあるらしくて。木村さんのお話とも繋がりますが、花を何かのシンボルと捉えたり、花言葉のような意味を込めたりして、誰かに想いを届ける。そういった素敵な文化を築いたことが、僕の視点からは大きな花の価値だと感じます。結果、『プリティ・ウーマン』や『華麗なるギャツビー』など、花を贈る美しい名シーンのある映画がたくさん生まれていますし、花はカルチャーシーンにも様々な影響を与えていますよね。

GIVENCHY表参道にて行われたプライベートパーティーにて、来場者にフローリストがその場でつくるミニブーケをプレゼントする企画をSTARMINE PLANNINGがプロデュース
話している木村貴史さんのアップ写真

「社会貢献性」「SNS」
フラワー業界の最前線

長井ジュンさん
長井

そんな歴史の延長線上で、人々が花に求めるものは、今も進化しているように感じます。特に最近感じるのは、ファッション業界や飲食業界と同じように、フラワー業界にも「エシカル」 「フェアトレード」といった社会意識が求められ始めているということ。SDGsなどの世界的な波はもちろんあり全業界においてその意識は強まっていると思いますが、特に花は幸せなシーンで使われることが多いため、その裏にネガティブな要素はない方がいい。花をアップアイクルした商品や、ロスフラワーを減らす努力をしている花屋を選ぶ人も増えていますよね。

木村貴史さん
木村

長井くんがコンセプトを考えて、うちもアイテムまわりなどを一緒に手掛けた今日の対談会場「LORANS.」も、まさにそういった時代の流れの中で生まれた花屋だよね。障がいのある方の積極採用をしたり、花を再生紙に変える取り組みを通して、社会課題と向き合ってる。

LORANS.(ローランズ)の店内写真
スムージーの写真
対談会場は千駄ヶ谷のソーシャルフラワー&スムージーショップ「LORANS.(ローランズ)」
LORANS.(ローランズ)店内のドライフラワーの写真
長井ジュンさん
長井

もちろんそれだけだとお客さんは来ないので、カフェを併設させて花のスムージーとかエディブルフラワーを提供するなど、別の角度で今の時代に求められる「SNS映え」の要素も意識しました。このお店はテレビや雑誌でもかなり取り上げられていますが、社会貢献文脈とSNS映え文脈での取材はちょうど半々くらいです。

木村貴史さん
木村

花はSNS時代とも相性いいよね。企業から「花を使って非日常的なイベント空間をつくりたい」というような依頼も増えたから、フラワー業界はSNSの恩恵を強く受けてる気がする。

長井ジュンさん
長井

正直、さっき話していた花の深い価値とは全然違う表面的なビジュアルの価値だけが切り取られていると思うこともあるけど、そのおかげでみんなの日常の中に花が馴染んでいます。そういった入り口から花の世界に興味を持つ人が増えるなら素敵なことですよね。

「雨の日、花の日」をコンセプトにした「plantica x Wpc.」のコラボレーション傘。リアルな美しい花柄をプリントし、雨の日の気持ちを明るくするとともに、傘の忘れ物や廃棄を減らす
あごに手をあてながら話す木村貴史さんの写真

テクノロジーが変える
人と花の関係性

木村貴史さん
木村

そして、僕はこれからテクノロジーが人々の花に対する理解度を深め、人と花の関係性を変えていくと予想してもいる。たとえば来年から日本も5Gが導入されてARやMRが普及していくはずだけど、そうするとたとえばプレゼントで渡された花束やフラワーボックスに込められた想い、花言葉のような補足情報を同時に別レイヤーで確認することができる。これまで色とか形とかビジュアルの価値にしか目を向けていなかった人も、花が持つストーリーに触れることになるから、花を贈ったり飾ったりすることの価値が深まっていくと思う。

長井ジュンさん
長井

テクノロジーによってフラワー業界は過去に例を見ない革命期に入っていると感じます。サブスク型の花の定期便サービスは「部屋に花を飾りたい」と思いながらも花屋に行く時間がとれずにいた人の新たな選択肢になっているし、土の温度や植物の状態などを感知して水やりのタイミングを教えてくれるプランターなどもできていて、それは花を枯らすリスクを減らして植物を買うハードルを下げることに繋がっていくはず。花瓶に入ったバラの花びらを撫でたら部屋に優雅なBGMが流れるなんていう世界も近いかもしれません。

木村貴史さん
木村

あと、teamLabやNAKEDのようなテクノロジーアート集団も、鑑賞者を花の世界に没入させるような作品を展開して国や文化を超えて評価を得ているけど、彼らもゴッホやウォーホルのように花で成功して歴史に残る存在になるんじゃないかな。planticaも花の魅力を最大限に活かすようなテクノロジーアートを展開していて、これからもっと力を入れる予定なんだけど。

万華鏡をモチーフにしたplanticaのデジタルアート作品。2019年に台湾で開催された大型展覧会で披露された
木村貴史さんの話を聞く長井ジュンさんの写真

都会の屋上に
共同花園コミュニィティ?
フラワーカルチャーの未来

長井ジュンさん
長井

他にも今後の展望ってありますか?

木村貴史さん
木村

都会の屋上にフラワーガーデンをつくって、飾りたい人は摘んで帰れるような場所をつくってみたいかな。バイヤーのセレクトを楽しめる花屋ももちろんいいんだけど、僕としては「花ってもともと街に生えてるものなんだから、自分で摘んで飾るのが一番自然」とも思ってて。共有型のフラワーガーデンにすればコミュニティも形成されて新たなフラワーカルチャーになり得るし、スポンサーをつければビジネスモデルとしても成り立ちそう。次世代コミュニティメディアのthreeでできないの?(笑)

長井ジュンさん
長井

僕は木村さんみたいなエッジの効いた展望は語れないのですが、「気分によってカフェを使い分けるのと同じように、贈る相手やシーンによって花屋も使い分けるのが当たり前」という感覚をみなが持っているような、成熟した花社会を実現させられたらと思っています。

木村貴史さん
木村

やっぱり僕は「おっ」とさせようとしてて、長井くんは「ぽっ」とさせてくれるね(笑)。今日はありがとう、また一緒に何かやろう。

並んで笑顔の長井ジュンさんと木村貴史さんの写真

特別対談

花の価値と向き合う2人が想像する
フラワーカルチャーの未来

木村貴史 × 長井ジュン

2020.01.07 WED
The Time of Talk
Takashi Kimura × Jun Nagai